インプラントの痛みはどのくらい?手術法や経過・軽減する方法を紹介
medical columnインプラントというと、入れ歯などと違って手術が必要となり、「それってどれくらい痛いの?」と不安になってしまうのではないでしょうか。
『腫れてしまうのでは?』と考えて、手術を躊躇うかもしれません。
どんなときに痛いのか、痛むならどれくらい続くのか、痛みや腫れを軽くする方法はあるのか、インプラントの手術をするときの悩みはさまざまです。
この記事では、インプラントの痛みについて、手術後の注意点を含めて詳しく解説します。
インプラントの手術で痛みが不安な方は、参考にして不安を解消してください。
インプラント手術の痛みとは
手術というと痛いイメージですが、インプラントの手術中は麻酔のため痛みはほとんどありません。
骨への振動は感じるかもしれませんが、痛みとは違う感覚です。
局所麻酔は必ず投与され、歯科医院によっては静脈内鎮静法も行っているため、痛みに関してはほとんど感じずにインプラントの手術を受けられます。
麻酔が切れて数日は痛みが出る場合がありますが、痛み止めの服用で軽減できます。
治療の種類によっては術後に腫れる可能性もあるため、2~3日から10日ほど鎮痛剤や抗生物質を服用することもあります。
治療内容や本数によって痛みに違いがあり、インプラントの埋め込み本数が多い場合や、上顎よりも下顎の方が腫れやすいなどの傾向があります。
インプラント手術の麻酔
インプラントの手術では麻酔をするため、手術中の痛みはないといえます。ここでは、インプラント手術で使用する麻酔について解説します。
局所麻酔
局所麻酔は、インプラントを埋め込む場所だけに感覚がなくなるように麻酔が効き、体の他の場所は麻酔が効いていない状態です。
麻酔のおかげで手術箇所の痛みはほとんどありませんが、局所麻酔を打つとき針を刺す痛みはあります。
周りの音や声が聞こえるため、手術中に何をしているかわかり、人によっては緊張や怖さを感じるかもしれません。
表面麻酔
針を刺す痛みは表面麻酔で回避が可能です。
表面麻酔とは、局所麻酔を打つ前に患部に表面麻酔剤を塗って、歯茎の表面感覚が鈍くなり痛みを感じづらくする麻酔です。
局所麻酔で針を刺すときの痛みを軽減することができるため、使用してもらえるかを歯科医院に確認してみましょう。
静脈内鎮静法
局部麻酔だけでは不安や緊張が心配な場合は、静脈内鎮静法という麻酔方法があります。
この麻酔を希望すれば、静脈に安定剤を注入して半分寝たような状態で手術を行うため、患者さんの負担を軽くできます。
全身麻酔に近い感覚ですが、意識はあるうとうとした状態です。
痛みに対する恐怖や緊張、不安などパニックで血圧が急上昇してしまうのを防げます。
静脈内鎮静法は患者さんの状態管理が必要な麻酔のため、全ての歯科医院が行えるわけではなく、選択できるかあらかじめ確認しておきましょう。
骨造成の痛み
インプラントの手術の際、骨造成の治療を行うと、術後に痛みと腫れが出る可能性があります。
ここでは骨造成という治療について、詳しく解説していきます。
骨造成を行うのはどんな場合?
骨造成とは、インプラントを入れるときに、骨の量が不足していてインプラントの固定が難しい場合に、自家骨や人工骨によって骨を増やす治療です。
造成法は3種類あり、骨を増やしたい場所などにより、どの方法を選ぶかは変わってきます。
- GBR法
- サイナスリフト
- ソケットリフト
GBR法は、歯周病の悪化や虫歯や外傷で歯が失われてしまったなどのためインプラントを埋め込みたい位置に骨が足りない場合に行われる骨造成方法です。
インプラント手術を同時に行う場合と、骨が再生されたのを確認してからインプラント手術を行う場合があります。
別日の場合は一旦傷口を縫合してから6~10ヵ月ほど待つ必要がありますが、骨を増やす量や高さにより、どちらを選ぶかは変わります。
サイナスリフトは上顎洞の底側に骨を増やす治療で上顎洞挙上術と呼ばれ、極端に骨が少ない場合や広い範囲の骨造成に対応できる方法です。
GBR法と同じく、インプラントを同時に行う場合もありますが、別日の場合は人工骨が安定するまでに時間がかかるため、治療の完了までには6~12ヵ月ほどかかります。
ソケットリフトもサイナスリフトと同じく、上顎洞の底側に骨を増やす治療ですが、増やす骨の量が少なくて済む場合に選択される方法です。
歯茎への傷口が小さく感染のリスクが低くなり、また、インプラントと同時に手術する場合が多いため、治療期間も3~6ヵ月程度と短くなります。
骨造成法による痛みと経過
骨造成を行うと、術後3日をピークに10日間くらいの間痛みがあります。
自分の骨を採取して埋め込む処置をする場合、インプラントの場所と骨を取る場所を切開するため傷が2カ所になりますが、骨を取った場所が痛むケースが多い傾向です。
痛みの強さや続く期間の程度は個人差がありますが、眠れないほどの痛みや鎮痛剤が効かないくらい強い痛みの場合は、細菌感染なども疑われるため歯科医師に相談してください。
また、上顎の骨造成は腫れる可能性が高く、手術の翌日以降に腫れる場合もあります。
サイナスリフトやソケットリフトの上顎洞拳上術で骨造成後、1週間~10日ほど腫れることが多いため、術後のスケジュールには気をつけましょう。
術後に痛みや腫れが出てくるのは、傷を治そうと細胞が活動しているという正常な反応で、時間の経過とともに緩和されます。
歯茎移植の痛み
必要な歯肉を別の場所から移植する手術で、上顎から採取する場合が多いです。
インプラントの治療で必ず行うわけではなく、症状により必要に応じて行う手術となります。
ここでは、歯茎を移植する場合は痛みはどんなものなのか、解説します。
歯茎移植を行うのはどんな場合?
歯茎移植は、インプラントを埋め込む場所に歯茎が少ない場合、インプラントを固定するのが難しいため、他の場所から歯茎を移植する手術です。
歯周炎などに対する防御力を上げることで、インプラント治療後に歯周炎などのトラブルになるのを防ぐ効果を期待できます。
患者さんの歯茎の状態などにより、歯科医師の判断で必要となった場合に行われます。
歯茎移植の痛みと経過
歯茎移植では、移植する場所と採取する場所の2カ所を切開する手術です。
傷口が2カ所になりますが、歯茎を取った場所が痛むケースが多い傾向があります。
虫歯のような痛みではなく傷口の痛みで、痛み止めで対応できる程度がほとんどです。
傷を縫った糸を抜糸するのは1~2週間後となり、抜糸時に痛みを感じることがあります。
抜糸後数ヵ月経過を見て、移植した歯茎が馴染んでからインプラント手術を行うことになります。
術後数年たってから痛むケース
インプラントの手術後、数年たってから痛むというケースがあります。
手術直後の痛みは徐々に落ち着きますが、数年後に痛みを感じる原因はいくつかあります。
ここでは代表的な症状と予防法を紹介します。
インプラント周囲炎
インプラント周囲炎とは、インプラントを支えている周辺の歯周組織が炎症を起こしてしまっている状態のことで、インプラントの歯周病とも呼ばれています。
歯茎の出血や膿が出たり、痛みや腫れがあったり、インプラントの周りの歯茎に症状が出る病気です。
歯の表面にプラークが蓄積し、歯周病菌を増殖させることが主な原因です。
軽度の場合は歯科医院で適切な処置ができますが、骨まで進行してしまうと重症化して、インプラントがぐらついてしまい、残すのが難しくなってしまうかもしれません。
予防のためには、歯科医院で定期検診を受けてメンテナンスをする、きちんとした丁寧なセルフケアを行うなど、心がけましょう。
また、インプラント治療後には禁煙を勧められますが、インプラント周囲炎の予防に対しても有効です。
噛み合わせの変化
インプラント治療のときは噛み合わせに問題がなくても、数年後に噛み合わせが変化して痛みが出る場合があります。
噛むときの癖や時間の経過で、嚙み合わせがずれてしまうのです。
噛み合わせが悪化すると力のバランスが崩れ、インプラントに負担がかかることにより痛む人もいます。
痛みの原因が噛み合わせだった場合は、被せ物の調整で対応できることがほとんどのため、早めに歯科医院を受診してください。
放っておくとアバットメントへの負担が大きくなり、インプラントのぐらつきや破損につながってしまうかもしれません。
定期的な歯科医院への通院で早めに噛み合わせの変化に気づければ、トラブルを防げる可能性があります。
アバットメントのネジの緩み
アバットメントとは、インプラントの土台と人工歯をねじによって連結している部分です。
この部分が術後に数年たって緩んでしまうと、インプラントが安定しなくなりぐらついたり、痛みが発生したり、トラブルにつながってしまいます。
インプラントの破損の可能性もあるため、違和感があったらすぐに受診しましょう。
歯科医院の定期検診をきちんと受けることで、アバットメントのねじが緩んでいないかも診てもらえます。
周囲の歯にトラブルが起こった場合
インプラント自体に問題がなくても、周囲の歯にトラブルが起こった場合は痛むことがあります。
周辺に虫歯や歯周病が発生したときは、痛みを感じるかもしれません。
インプラントは人工歯のため虫歯になりませんが、歯と歯の間にプラークが蓄積し、隣り合った歯が虫歯になる可能性があります。
予防するには日々のセルフケアが重要です。
歯間ブラシやデンタルフロスなども使って、歯の間までしっかり汚れを落とし、虫歯菌の繁殖を防ぎましょう。
また、定期的に歯科医院でクリーニングをしてもらい、歯石を溜めないようにしてください。
ひび割れ
インプラントと周囲の骨の間に微細な亀裂が入ることがあり、痛みが発生する場合があります。
ひび割れの原因となり、インプラントの破損や脱落の原因になりかねません。
力が強くかかってしまう強い食いしばりや、睡眠中に無意識に歯ぎしりしてしまいひび割れにつながることが多いです。
顎骨部分に痛みなどの異常を感じたら、すぐに歯科医院を受診しましょう。
レントゲン検査で確認できるため、必要ならば検査を受けてください。
また、食いしばりや歯ぎしりの予防のためには歯を離すように意識したり、適度な運動やストレッチをしたり、ナイトガードという睡眠中につけるマウスピースを検討したり、対策を歯科医師に相談しましょう。
インプラントの痛みを和らげるには
インプラントの手術をした後の痛みは2~3日、長くて10日程度はあると考えられます。
局所麻酔が切れるのは2~3時間、静脈内鎮静法でも3~4時間ほどです。
術後の痛みを少しでも和らげる方法を、注意点とともに紹介します。
刺激物を避け、柔らかいものを食べる
術後の傷が治っていない状態のときは、辛味や酸味が強い刺激物は避けて、柔らかいものを食べるように心がけましょう。
刺激物や固い食べ物は傷口を広げたり、炎症の原因になったり、痛みや出血につながる可能性があります。
麻酔が完全に切れてから最初の食事はおかゆや麺類など、柔らかいものを食べましょう。
術後の数日間はおかゆや柔らかく煮た麺類の他に、ヨーグルトや納豆などもおすすめです。
また、手術した部分では噛まないように意識して、傷に負担がかからないよう注意してください。
インプラントと骨の結合には1ヵ月ほどかかるため、この期間は負荷をかけないことが重要です。
患部に歯磨きなどの刺激を与えない
術後は『口内を清潔にしなければ』と意識して歯磨きを丁寧にする人が多いかもしれませんが、患部に触れないように注意しましょう。
抜糸までは傷口の周辺の歯磨きには特に気をつけて、歯ブラシが当たらないようにしてください。
手術した部分に触れてしまうと、出血や痛みがあったり、傷の治りが遅れたり、回復まで長引いてしまいます。
また、マウスウォッシュなどは刺激が強いため避けるようにして、歯磨き粉はつけずにブラッシングを丁寧にするのみにしましょう。
血行が促進することは避ける
血行が良くなれば血流が上がり、出血や痛みが出てしまう可能性が高まります。
傷の治りが遅くなったり、インプラントと骨の結合が遅くなったり、血行を促進する行為は術後の注意が必要です。
術後2~3日は入浴を控えシャワーで済ませるようにして、熱いお湯は避けましょう。
サウナや温泉も同様に血行が良くなってしまうため、控えてください。
また、激しい運動も血行が良くなることで出血や痛みの心配があるだけでなく、疲労から免疫が落ちてしまい、傷の治りが遅くなる可能性があります。
術後は運動せずに安静にできるように、あらかじめ予定を調整しておくと良いでしょう。
気圧の変化を避ける
骨造成をした場合、飛行機など高度な場所に行かないように注意しましょう。
気圧の変化によって、傷口が痛む可能性があります。
術後1ヵ月は飛行機に乗るなどの気圧の変化がある高度は避けて、できればインプラントと骨の結合が安定する3ヵ月の間は避けるようにしましょう。
出張や旅行で飛行機に乗る予定がある場合は、歯科医師と相談して手術の日程を変えるなど対策をとってください。
まとめ
インプラント治療は、手術中の痛みは麻酔によってほとんどないですが、術後は痛みが出る可能性が高いです。
治療方法や本数、術後の経緯にもより、痛みの感じ方は個人差があります。
インプラントの手術をしたら、定期検診に通い歯科医院でメンテナンスをしてもらうことと、丁寧なセルフケアを忘れないようにしましょう。
痛みを軽くする術後の過ごし方や、数年後に痛みが出たらどうしたらいいかなど、この記事を参考にしてください。
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