歯周病の痛みとは?治療は痛い?虫歯との違い・対処法など詳しく紹介
medical column歯周病は進行すると歯を支える骨(歯槽骨)まで溶けてしまう病気ですが、初期の自覚症状では痛みがほぼありません。
痛みを感じる頃にはすでに骨が溶け始めている中等度まで進行していることが多く、治療開始が遅れがちです。
この記事では、歯周病の痛みとはどのようなものなのか、いつ痛むのか、痛いときの対処法やしてはいけないことなどを紹介します。
治療時に痛みがあるのかどうかも紹介しますので、受診を考えている人はぜひ参考にしてください。
歯周病の痛みとは
まず初めに、歯周病の痛みについて紹介します。
自覚症状には痛みがあるのか、痛いときには何が起こっているのか、どんな段階で痛いのかなど、歯周病の痛みを知って、理解を深めましょう。
歯周病チェックリスト
今現在、歯周病にかかっているかどうかをチェックしてみましょう。
以下の項目の中で、1つでも該当するものがある場合は要注意です。
- 起床時に口の中がネバつく
- 歯磨きや口をすすいだときに出血する・歯ブラシに血がつく
- 歯茎を押すと膿が出る
- 歯茎が赤く腫れる・ぶよぶよする
- 冷たいものがしみる
- 歯が浮くような違和感がある
- 歯がぐらつく
- 歯の隙間が広くなった
- 歯並びが変わってきた
- 歯が長くなった・歯茎が下がってきた
- 硬いものが噛みづらくなった
- よく食べ物がはさまるようになった
- 口臭が気になる・指摘された
- 喫煙者である
- 糖尿病である
- 口腔習癖(歯ぎしり・口呼吸など)がある
「歯磨きを丁寧にして様子を見よう」と、歯科医院の受診を後回しにしているうちに歯周病が進行してしまうかもしれません。
上の項目に1つでも心当たりがあるなら、速やかに受診しましょう。
歯周病で痛むときはいつ?
歯周病で痛みを感じるのは、病気が進行して症状が悪化してからが多いです。
歯周病は『サイレントディジーズ』といわれ、痛みがないまま進行します。また、痛みがあっても慢性的ではなく治まることもあるため、見逃されてしまうことが多い病気です。
歯周病で痛むのは以下のようなときです。
- ものを噛むとき
- 知覚過敏のとき
- 急激な炎症を起こしているとき(急性期)
ものを噛むときに痛いのは、歯が動いたり炎症を起こしているためです。人によっては、この時点でも痛みがない場合があります。
このように、歯周病はある程度進行してから痛みが出始める病気です。
痛み出したときには重度まで進行している可能性も
歯周病には進行具合に段階があり、初期→軽度→中等度→重度の順に進みますが、痛みが出始めるのは中等度から重度に進行する頃です。
各段階の症状や特徴は以下です。
- 初期(歯肉炎)……歯茎のみの炎症が起こる。多少の腫れや出血がある
- 軽度……歯槽骨が溶け始める。歯周ポケットが深くなり始める
- 中等度……歯槽骨が半分ほど溶け、歯がぐらつく。口臭が強くなる。噛むと痛いことも
- 重度……自然に歯が抜けることがある。痛みでものが噛めない
中等度でも痛みが出ないことがあるため、痛みで歯周病に気づくのは重度である可能性が少なくありません。
しかし、手遅れと思われる症状からでも歯を残せる可能性があるため、気付き次第速やかに歯科医師に相談しましょう。
歯周病の急性症状の痛みとは
歯周病は急性期のように急激な炎症を起こすと、歯なのか歯茎なのか、どこが痛いのか分からないほど痛むといわれています。
急性期の原因はさまざまですが、疲れたりストレスが溜まっていたりすることで抵抗力が落ちたとき、または口腔状態が悪いときが多いです。
他にも、溜まっている膿を出せずに起こる圧迫や周辺組織の壊死などがあります。
排膿すれば痛みはある程度引きますが、自分で出すのは逆に細菌が入り込んで悪化するリスクがあるため絶対にNGです。
歯周病で骨が溶けるのは歯周病菌のせいではなく、菌と戦うために身体の防御作用が起こす炎症が、菌に侵された部分の骨を排除しようとして破壊するためです。
歯周病治療は骨を残すために炎症を食い止めることが大切です。急性症状を起こさないように治療・ケアを続けましょう。
虫歯の痛みとの違い
虫歯と歯周病は、痛みだけでいえば虫歯のほうが強く、我慢できずに受診する人は多いです。
その点、歯周病は主訴が痛みではなく出血や腫れのため、我慢できてしまう分放置されてしまい、痛みがないまま進行します。
しかし、1本単位でかかる虫歯に対して、歯周病は複数の歯が一気に罹患することで多くの歯を1度に失くす可能性があります。
虫歯も歯周病もそれぞれに違う怖さがあるため、積極的な治療・予防が必要です。
歯周病で痛みがあるときの対処方法
歯科医院の休日や仕事中など、歯周病の急性期によって痛みが出ても受診できない場合があります。
歯周病で痛みがあるときの対処法について紹介します。
ただし、これから紹介する方法はあくまで応急処置であり、歯周病以外の原因による痛みの可能性もあるため、後ほど必ず歯科医院を受診してください。
患部を冷やす
歯茎が腫れてズキズキとした痛みがあるときは炎症を起こしているため、患部を冷やすことで腫れが引いて、症状が治まる場合があります。
冷たいタオルや冷却シートを頬の外側にあてて冷やしましょう。
口に氷を含むなど直接冷やすのは、刺激が強すぎて悪化させる場合があるためやめましょう。
市販の鎮痛剤を使用する
歯科医院で薬を処方されていない場合、市販の鎮痛剤でも痛みを落ち着かせられます。
ドラッグストアなどで販売している解熱効果や鎮痛効果がある飲み薬、通販や薬局などで手に入る歯茎に塗る塗り薬で構いません。
ただし、鎮痛剤はあくまで一時的な対処法でしかありません。なるべく早めに歯科医院を受診して、適切な治療を受けることが大切です。
なお、妊娠中は服用できる薬に制限があるため、妊娠の可能性がある場合は医師に相談してから鎮痛剤を使用しましょう。
歯を磨く
歯垢が付着して汚れていると、歯茎が腫れる原因になることがあります。
その場合は歯を磨くことで落ち着く場合がありますが、腫れている歯茎を刺激しないよう、柔らかい歯ブラシで優しく磨く必要があります。
歯間や歯周ポケット内の汚れも念入りに磨くことが大切です。
歯磨き後に殺菌作用のあるマウスウォッシュを併用すると効果的です。
治療時の痛み
基本的に、痛みが出る可能性のある治療の場合は麻酔を使用するため、治療中の痛みはほとんどありません。
そして、歯周病の治療の基本は歯垢除去(プラークコントロール)ですが、ここでは、他にどのような治療が段階別に行われるのか、治療後の痛みなどについても紹介します。
歯肉炎
歯肉炎は歯周病のごく初期の状態で、クリーニングによって歯垢を取り除く程度の治療となるため、痛みはほとんどありません。
そのため麻酔の必要はありませんが、多少の出血をする場合があります。すぐ止まるため心配はありません。
歯垢が硬くなった歯石はハンドスケーラーや超音波スケーラーを使った『スケーリング』を行い、きれいに掃除します。
歯磨き指導もあり、毎日の歯磨きによってしっかり歯垢を落とす磨き方を知ることができます。
軽度歯周炎
軽度歯周炎は歯周ポケット内に歯垢や歯石が溜まってくる段階で、スケーリングでは届かないところの歯垢や歯石を取る『ルートプレーニング』を行う場合もあります。
スケーリング後に歯根の表面を滑らかにすることで、歯垢の付着を防いで歯茎の付着を促し、歯周ポケットを改善に導きます。
骨が少しずつ溶け始める段階のため、歯茎が赤く腫れて出血しやすく、冷たいものがしみたり、歯茎が下がり始めたりしますが、症状としては痛みがない場合が多いです。
ルートプレーニングでは痛みが起こることがあるため、麻酔を使用します。
麻酔が切れた後は違和感や数日の痛みがある場合がありますが、ズキズキと痛むことはなく、鎮痛剤も処方されます。
中等度歯周炎
歯周炎の中等度は、歯がぐらついて噛みづらくなったり、歯茎が下がって歯が長く見えたりと、軽度より違和感が多くなる段階です。
口臭もきつくなり、人によっては噛む際に痛みを感じる場合があります。
とうとう痛みが症状として出始める中等度歯周炎ですが、歯槽骨の破壊がおよそ半分程度とさらに進行しています。
治療内容は軽度と同じ内容ですが、一度で除去しきれずに数回に分けて行い、一度にかかる時間が長くなるなど、治療に時間がかかるようになります。
また、進行具合によっては重度歯周炎で行われるような『フラップ手術』を行う場合もあります。
フラップ手術については、次に紹介します。
重度歯周炎
重度歯周炎になると歯槽骨は半分以上溶け、歯周組織にも破壊が拡大し、歯磨きで痛むために口内を清潔に保つことができず、悪化がさらに加速します。
歯は中等度よりもさらにぐらついて硬いものが噛めなくなる、歯茎がブヨブヨになって膿や血が出る、起床時に血の味がするようになる、歯が自然に抜けるなど、症状もさまざまです。
重度の歯周炎には、以下のような治療法があります。
歯周外科治療(フラップ手術) | 歯周ポケットがかなり深くなって歯垢や歯石の除去が難しくなるため、歯茎の病変部を切除し歯周ポケットを浅くする |
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歯周再生療法 | 失われた歯周組織を薬剤を入れて再生を促す治療法 |
歯周補綴治療 | 被せもので噛み合わせを固定する |
骨・歯の移植 | 親知らずや口の中の骨などを欠損部に移植 |
フルマウスディスインフェクション | 抗生剤の内服や抗菌薬の局所投与・超音波器具と消毒薬などを用いて徹底的に除菌する |
フルマウスディスインフェクションは痛みがない治療ですが、他は外科治療のため麻酔を使用します。術後の痛みは1週間ほど続く場合もありますが、痛み止めが処方されます。
重度になるほど治療も大掛かりになるため、治療に痛みも負担もほとんどない初期のうちに発見できるのが理想です。
定期検診時
歯科医院の定期検診は、初期や軽度であればほとんど痛みがありません。
定期検診の内容は以下です。
- 虫歯・治療経過のチェック
- 歯茎のチェック(歯周ポケットの状態・炎症の有無など)
- 歯垢・歯石除去(クリーニング)
- 歯磨き指導
- 気になることなどの相談
歯肉炎の治療内容とほぼ同じです。歯茎チェックの際に歯周ポケットの深さをチェックするため器具で触りますが、この時点で痛い場合は炎症を起こしているため、きちんとした治療が必要です。
歯の定期検診は保険診療で受けられます。それほど、定期検診は重要と考えられているといえるでしょう。
歯周病が痛むときにしてはいけないこと
最後に、歯周病の耐えがたい痛みに襲われたときにしてはいけないことを紹介します。
上述の「歯周病が痛いときの対処法」と合わせて、応急処置の参考にしてください。
患部を触る
歯茎が痛い場合は炎症を起こして腫れていたり、膿が溜まっていたりするため、患部を触ることで刺激になり、痛みが悪化する可能性があります。
なかには溜まっている膿を出そうとして針を刺したり絞ったりする人がいるそうですが、細菌が入り込むリスクが大きいため、絶対にやめましょう。
歯磨きをして汚れを落とすと痛みが軽減する場合がありますが、その場合は柔らかい歯ブラシを使い、歯茎に毛先が当たらないように気をつけて磨きましょう。
あまりに痛い時は、マウスウォッシュもおすすめです。
血流がよくなること
血流がよくなること、患部を温めるようなことをすると、痛みが悪化する可能性があります。
入浴やサウナ、激しい運動や飲酒、温かい食べ物や飲み物など、血流がよくなることは思った以上にいろいろあります。
お風呂はやめてシャワーにする、温かいものは冷ましてから摂るなどしてやり過ごし、受診ができるまで安静に過ごしましょう。
刺激のある飲み物
甘い飲み物、炭酸などは刺激があるため痛みを悪化させる可能性があります。
甘いものを口にした際に歯が痛む・しみるのは『甘味痛』といって、知覚過敏の場合に見られる症状です。
歯周病は歯根が露出して知覚過敏を起こしますが、甘い飲み物は特に歯根に強い刺激を与えやすいため、避けた方がいいでしょう。
また、炭酸も甘いもの同様に刺激が強いため避けましょう。
喫煙
喫煙はニコチンによる血管収縮の作用のために、炎症からの回復が遅くなってしまいます。
喫煙には治療中も治りにくいというデメリットがあります。
よく「吸うと落ち着く」という人がいますが、痛みに関しては気のせいであるため、せめて痛むうちはタバコは控えましょう。
まとめ
歯周病は重度の手前程度に進行するまで痛みが感じにくい疾患です。
しかし、痛みがないからと放置して悪化すれば何もしなくても痛みが起こるようになり、治療時の負担も大きくなってしまいます。
目立つ症状がなくても定期的に歯科検診を受けて積極的に発見・治療することが、痛みを回避する一番の方法です。
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