歯周病の治療方法は?治療の流れや歯磨きのコツを解説
medical column歯周病は基本的に治らないとされていますが、進行を遅らせて炎症をおさえることはできます。しかし、初期段階では症状を感じないこともあり、歯周病と診断されても治療をせずに放置してしまっている人も少なくありません。。
この記事では、歯周病の治療方法や治療の流れ、歯磨きのコツについて解説します。歯周病と診断されたが放置している、もしかしたら歯周病かもしれないと不安な方は、ぜひ最後までご覧ください。
歯周病の治療方法
歯周病は、正しい治療方法を守ることで症状を遅らせることが可能です。ここでは、歯周病の治療方法について解説します。
歯周病の検査
歯周病の治療を始める際、まずは歯科医師や歯科衛生士による検査が行われます。歯周病は初期段階では自覚症状がほとんどないため、歯科医院で検査を受けないと正確な診断を行えません。
稀に自己判断で「歯周病だ」と断定する方がいますが、歯周病かどうかを診断するためには、医療機関の受診が必要となると覚えておきましょう。
なお、医療機関で行われる主な検査は次の通りとなっています。
- プラーク検査
- プロービング検査
- レントゲン検査
プラーク検査は歯周病の原因となる歯の汚れ「プラーク」の付着状態を調べる検査で、プロービング検査は針状の器具「プローブ」を使用して歯周ポケットの深さを調べる検査です。その他、エックス線写真によって歯を支えている骨の状態を調べるレントゲン検査などを行いながら、本人の歯周病がどれくらい進行しているのかを判断します。
歯周病は悪化後に治療すると相応の時間がかかるため、定期的に検査を受けるのが賢明です。
歯周病の基本治療
歯周病の治療では、基本治療として「歯垢・歯石の除去」「歯根面の滑沢化」「嚙み合わせの調整」などが行われます。歯垢や歯石は歯周病の原因の1つとなるため、基本治療の段階で的確に除去しておくことが重要です。歯垢や歯石が残っている状態だと、いくら治療しても改善につながりません。
歯根面の滑沢化は、歯垢や歯石を除去した後のざらざらした部分を平らにすることを指し、専門用語で「ルートプレーニング」と呼ばれます。表面の凹凸を取り除くことで、歯に付着する汚れを防止する効果が期待できます。歯周病が進行すると噛み合わせにも問題が出てくるため、適宜調整しながら治療を進め、最終的に歯茎を健康にするのが歯周病の基本治療といえるでしょう。
歯周病の外科治療
歯周病の治療には、外科治療として「フラップ手術」「歯周組織再生療法」などがあり、担当医の手によって直接改善を試みる場合もあります。
フラップ手術とは、歯茎を切開して歯根の先まで目視できる状態にし、歯垢や歯石の原因となる汚れを徹底的に除去する手術です。歯周ポケットの奥まで侵入した細菌や汚れは歯磨きだけでは除去できないため、深い部分まで見えるようにしてから除去を試みる外科治療といえるでしょう。
その他、歯周組織再生療法には主に3つの方法があります。
- GTR法:特殊な膜を設置して歯周組織の再生を促す方法
- エムドゲイン(リグロス):歯が生えてくる環境を再現して歯周組織の再生を促す方法
- 骨移植:骨を採取して失われた欠損部に移植することで歯周組織の再生を促す方法
歯周組織再生療法は上記の3つを駆使するのが一般的で、基本治療で回復が見込めない場合に行う外科治療となっています。ただし、どの方法が適しているかは担当医しか判断できません。さらに、歯科医院によっては上記治療に対応していないケースもあるため、まずは、通院する歯科医院の担当医に相談してみましょう。
歯周病の経過観察
基本治療と外科治療が無事に終了した場合、歯周病の経過観察段階に入ります。歯周病は「歯垢や歯石を除去したら治療完了」というものではなく、長い目で経過観察を行いながら状態が回復しているかを判断しなければいけません。
本人が正しく歯磨きできていないと、再び歯垢や歯石が蓄積して新たな歯周病につながってしまうため、歯科医師や歯科衛生士の指導を受けながら経過観察を進めます。自己流の歯磨きでは適切に歯の汚れが取れていない場合も多いため、歯の磨き方について正しく理解しておくことが重要となるでしょう。
歯磨きの徹底
歯周病は正しく歯磨きしないと進行する可能性が高い病気であるため、歯磨きを徹底することも忘れてはなりません。歯磨きの回数は朝昼晩の計3回という方が多いかもしれませんが、本来は「毎食後」と「起床後」「就寝前」の計5回が理想とされています。
最低でも朝と夜の計2回は歯磨きしないと歯垢や歯石が落とせないため、歯周病が心配な人は1日3回〜5回の歯磨きを徹底することが重要です。ただし、隅々まで磨けていないブラッシングを何度行っても効果は薄いため、まずは通院している歯科医院でブラッシングの指導を受けてみましょう。
歯周病治療の流れ
歯周病の症状を遅らせるなら、歯周病治療の流れを知っておくことが重要です。ここでは、歯周病治療の流れについて解説します。
歯の応急処置
歯周病が極度に進行している場合、まずは応急処置から行うのが通例です。
口腔疾患が悪化している場合、いきなり歯垢や歯石の除去を行っても歯周病の回復にはつながりにくいため、応急処置として患部を冷やしたり、痛み止めを服用したりします。
本来、歯周病を改善するためには日々のブラッシングを徹底して口腔内を清潔に保つことが重要なのですが、病状が悪化している場合は症状を抑えないことには何も始まりません。そのため、歯科医院では応急処置を行って症状をある程度まで抑えてから治療に入ります。
ただし、応急処置はあくまでも緊急的な措置でしかないため、「症状がなくなった=回復した」と安易に勘違いしないことが重要です。歯周病は適切な治療を行わないと症状が悪化する病気で、その後の治療をいかに徹底するかが治療の鍵となってくるでしょう。
歯の写真撮影
歯の応急処置が終わったら、写真撮影に入ります。レントゲン検査を行うことで、歯周病だけでなく歯を支えている骨がどのような状態になっているかを調べることが可能です。
歯周病が悪化すると歯茎だけでなく歯の根元に該当する骨部分まで影響を受け、最悪の場合は永久歯が抜け落ちてしまうことも珍しくありません。現代人の多くが歯周病を抱えているものの「放置すると歯を失う危険性がある」ことを認識できていないため、レントゲンを見て自分自身の認識を改めることが重要となるでしょう。
骨部分は普段の歯磨きでも目視することが不可能だからこそ、専門の歯科医院で一度検査してもらいましょう。
口内環境の診断
歯の写真撮影が終わったら、口内環境の診断に入ります。歯周病は口内環境が悪化することで発症する病気であるため、患者本人の口内環境を把握することが重要です。
歯科医院では口内環境の診断として「歯の状態」だけでなく「歯茎の状態」「骨の状態」も並行して調べるのが一般的で、何が歯周病の原因となっているのかを特定します。原因が特定できて初めて歯周病の治療に入るため、口内環境の診断は時間をかけてじっくりと行ってもらうことが重要といえるでしょう。
治療計画の立案
口内環境の診断が終了次第、治療計画の立案に入ります。
治療計画は患者の症状がどれほどのものなのかを軸に立案するのが基本で、基本治療で対応できるのか、外科治療が必要なのかを判断するのが通例です。治療方針はあくまで患者本人の意思が尊重されますが、場合によっては歯科医師と歯科衛生士の独断で治療計画を進める場合もあるため、症状を落ち着かせたいなら指示に従いましょう。
治療計画の実施
治療計画の立案が終了次第、治療計画の実施に入ります。
治療計画に従って治療を進め、経過観察を交えながら症状が改善されるかどうかを評価し、必要に応じて基本治療と外科治療を行います。ただし、治療計画通りに回復するかは担当医でも予測が難しいため、長い目で治療を進めていくという覚悟が必要です。
ブラッシング指導
歯周病治療では、ブラッシング指導も行われます。
いくら担当医が歯周病治療を徹底しても普段の歯磨きが徹底されていなければいずれは歯垢や歯石が溜まり、再び歯周病を再発してしまいます。歯周病の再発を防ぐためには1日3回〜5回のブラッシングを心がけ、歯に汚れが付着しないよう徹底して清潔に保つことが重要です。
なお、ブラッシング指導は歯科医師や歯科衛生士から直接受けられるため、どのように歯磨きすればいいのかわからない場合は何度も指導を受けて正しいブラッシングを習得しましょう。
メンテナンス作業
歯周病は再発の危険性がある病気であるため、定期的なメンテナンス作業も必要です。
定期的にメンテナンスを行うことで、歯周病の状態が「改善されているのか」「変わっていないのか」「悪化しているのか」を判断します。もし歯周病の回復の兆しが見えない場合、他の治療方法も検討するなど次の段階へ入ります。
状態の再評価
メンテナンス作業と並行して状態の再評価を行い、歯周病が無事に回復しているようであればそのまま経過観察を続けます。
最終的に歯周病の症状が落ち着いた場合、歯科医院で行う歯周病治療は終了となります。ただし、歯周病は日々のデンタルケアが大切であるため、歯周病が落ち着いたからといって油断してはいけません。可能であれば、半年に1回は歯科医院を訪れて検査しましょう。
歯周病を防ぐ歯磨きのコツ
歯周病を防ぐためには、歯磨きのコツを知っておくことが重要です。ここでは、歯周病を防ぐ歯磨きのコツについて解説します。
1箇所10回~20回の往復
歯磨きは、1箇所10回〜20回の往復を目安として行いましょう。
意識して数えながら歯ブラシを往復させることで、隅々まで磨くことが可能です。ただし、歯を磨く際は同じ角度にならないよう、同じ箇所でも複数の角度から磨くよう心がけましょう。
「前歯表側→前歯裏側→奥歯表側→奥歯裏側」のように順番を決めて磨いていくと、磨き残しなく綺麗に磨けます。
力を入れずに優しく磨く
歯磨きは、力を入れずに優しく磨くようにしましょう。
歯垢や歯石を除去したいという思いから、つい力を入れてごしごし磨いてしまう人もいるのですが、力を入れすぎると歯表面のエナメル質にダメージが蓄積されます。エナメル質が傷つくと歯表面に汚れが付着しやすくなるため、かえって逆効果です。歯磨きの際には歯ブラシを指2本〜3本で持つようにし、磨くというよりは撫でるように動かすと良いでしょう。
鏡を見ながら毛先を当てる
歯磨きは、鏡を見ながら毛先を当てるようにしましょう。
きちんとブラッシングできているようで実はしっかりと磨けていない人もいるため、鏡を見ながら毛先を当てつつ磨くよう心がけてください。歯の表面はもちろん歯周ポケットまで歯ブラシが届くように磨くことで、より歯垢や歯石を除去しやすくなります。
毛先を細かく動かす
歯磨きは、毛先を細かく動かすようにしましょう。
大振りで歯ブラシを動かしても、歯と歯の隙間に毛先が当たらず、結局は歯の表面しか磨けていないということも少なくありません。毛先を細かく動かせば歯と歯の隙間に歯ブラシが入り、歯垢や歯石を除去できます。歯垢や歯石は歯と歯の隙間に溜まりやすいため、毛先は意識的に細かく動かしましょう。
まとめ
歯周病の治療は、基本治療と外科治療を組み合わせて行います。
基本治療では「歯垢・歯石の除去」「歯根面の滑沢化」「嚙み合わせの調整」、外科治療では「フラップ手術」「歯周組織再生療法」を中心に進めていくのが王道です。しかし、歯周病治療は歯科医院でのデンタルケアはもちろんですが、日常生活で日々のブラッシングを徹底することも欠かせません。うまく歯磨きできないと何度も歯周病が再発することもあるため、歯周病治療と並行して正しいブラッシングも習得することが重要です。
なお、AKIデンタルクリニック・矯正歯科医院では歯周病の治療だけでなく、ブラッシング指導も行っています。もし「歯周病を治したい」というお悩みを抱えているようでしたら、まずは当院にご相談ください。