歯周病の治し方とは?自分でもできる?治療にかかる期間も詳しく紹介
medical column歯周病は国民病といわれており、近年には55歳を過ぎるとおよそ2人に1人が4mm以上の歯周ポケットを有しているという結果が出ています。(参考:令和4年 歯科疾患実態調査結果の概要)
罹患率の高い歯周病は「治らない病気」といわれていましたが、昨今はさまざまな治療法があり、手遅れと思える状態でも抜歯だけが選択肢ではなくなっています。
この記事では、歯周病の具体的な治療法や、歯周病になった場合にできること、実際に治療にかかる時間や費用などを紹介します。
「もしかして歯周病かもしれない」と思いながら不安で受診できないでいる人は、ぜひきっかけにしてください。
歯周病の治し方
歯周病は適切な治療を行えば、進行を食い止め、健康な状態を維持することが可能です。
はじめに、歯周病の治し方について知っていてほしいことを紹介します。
進行を食い止めることが治療
歯周病によって破壊された組織が自然に元の状態に戻ることはないため「治らない」といわれていますが、進行を食い止めて炎症を抑え、健康な状態に回復することは可能です。
歯周病は「顎の骨が溶ける病気」といわれていますが、正しくは、細菌による感染症で歯茎や歯を支える骨に炎症が起こる病気です。
炎症とは、細菌に感染した部分を除去しようと働く防御作用ですが、その働きが骨まで広がってしまう状態を「骨が溶ける」と表現しています。
炎症が長引くほど骨が徐々に減少していくため、食い止める治療が必要です。
歯科医院と患者、双方のケアが必要
歯周病の治し方で一番大切なことは歯垢の除去(プラークコントロール)ですが、歯科医院のみで成し遂げられるものではありません。
歯周病の進行具合は初期から重度まで何段階かありますが、どの段階でも、治療の基本は歯垢の保険診療除去です。
歯垢も歯石も、歯科医院では器械を使用してきれいに取り除けますが、その後に歯垢を予防するのは患者さんのセルフケア(ブラッシング)です。
家できちんと歯を磨いていても罹患しやすい病気のため、家での歯磨きを治療として捉え、丁寧に実践する必要があります。
手遅れの症状が見られる歯周病も治療法がある
歯周病で手遅れと思われる症状があっても、必ずしも抜歯になるわけではありません。
歯周病に悩まされながらも、抜歯するのが怖い・治療が痛そうなどの理由で相談できない人は少なくないでしょう。
しかし歯周病の治療法は歯磨き指導から始まって、進行程度に合わせたさまざまな治療法が用意され、治療自体は麻酔も使用します。
痛くても我慢して治療に行かないよりもいい結果が期待できます。どれほど悪化していても、または自覚症状がないほど軽くても、まずは受診に踏み出しましょう。
正しい歯の磨き方
歯周病を治すには、歯垢除去が最も大切であり、歯磨きはその方法の一つです。
歯周病の程度に関係なく自分でできる治療法でもある、正しい歯の磨き方を紹介します。
自分に合った歯ブラシを選ぶ
歯周病の悪化を防ぐには、歯周ポケットに入り込む汚れをしっかりと掻き出すための、自分に合った歯ブラシを選ぶことをおすすめします。
おすすめの歯ブラシ選びのポイントは以下です。
- 口に対して少し小さめで、奥歯が磨きやすいヘッド
- 余計な力がいらない、手にフィットする持ち手
- 歯周ポケットから汚れを掻き出しやすい細い毛先
- 歯茎に負担をかけないよう優しく磨ける硬すぎない毛
炎症中は柔らかめの歯ブラシで時間をかけて丁寧に磨きます。
歯間ブラシやフロス・マウスウォッシュなど、便利な補助アイテムも併用して、歯垢をしっかり落としましょう。
毛が開いた歯ブラシは交換
歯ブラシは消耗品で、寿命は約1ヶ月です。特に毛が開いた歯ブラシは汚れを落としにくくなるため、定期的に交換しましょう。
歯ブラシは劣化すると毛の弾力がなくなり、ブラッシング時の力加減を歯茎に対してダイレクトに伝えるため、歯茎を傷つけてしまいます。
他にも、古くなった歯ブラシは雑菌が繁殖しているため、口腔内の細菌が増え、歯周病や悪化などの原因になります。
毎日磨いていても歯周病や虫歯になる人は、古い歯ブラシが原因かもしれません。
最低でも1日1回は丁寧に磨く
歯磨きが苦手な人や磨く習慣がない人がいますが、せめて1日に1回、寝る前のブラッシングだけは丁寧に行ってみましょう。
ブラッシングはできれば3~5分ほどかけて磨くのが歯周病予防に効果的ですが、毎食後が基本の歯磨きで毎回念入りに行うのは大変かもしれません。
唾液の分泌が減る就寝中は細菌が増えやすくなっているため、寝る前だけでもしっかり食べかすを落としましょう。
磨くタイミング
歯を磨くタイミングは「食後30分程度経ってから」と「食後すぐ」の2つの説がありますが、歯周病予防には食後すぐの歯磨きが効果的です。
- 食後30分経ってから……食後の酸性に傾いた状態で歯を磨くと歯が傷つく
- 食後すぐ……歯垢の増殖をなるべく早く抑える
前者は、酸蝕症(さんしょくしょう)の人に対して、または酸蝕症の予防に対して有効です。
酸蝕症は酸性の飲み物が好きだったり、摂食障害で頻繁に嘔吐したりする人にみられますが、健康な人の場合、柑橘系や炭酸の飲料を飲んだ際はうがいをする程度に済ませましょう。
歯周病や虫歯予防のためには、食後すぐ磨くのが適切です。
歯を磨くときのポイント
歯磨きの際、意識しておきたいポイントがあります。
- 歯間・噛み合わせ・歯と歯茎の境目は歯垢がつきやすいため、特に注意して磨く
- 歯の裏側・表側・噛み合わせを、それぞれ分けて磨く
- 順番を決めて磨くと磨き残しを防げる
- 毛先をどこにあてるかを意識する
- 毛先が広がらない程度の力加減で磨く
- 小刻みに1本ずつ磨く
下に紹介するブラッシング法を行うときも、以上を心がけて磨きましょう。
正しいブラッシング法
正しい歯磨きを知ることは、歯周病の予防や治療の基本です。
歯周病を予防するブラッシング法には以下があります。
バス法
- 鉛筆を握るように優しく歯ブラシを持つ
- 歯と歯茎の境目45度に毛先をあてる
- 左右小刻みに1本ずつ磨く
歯周ポケット内に毛先を入れるようにするのがポイントです。マッサージ効果もある方法です。
ローリング法
- 毛先を歯の根元に向け、歯ブラシの脇を歯茎に当てる
- 歯茎から歯の先に向けて回転させながら掻き出す
歯茎と歯の表面を同時に掃除することができます。マッサージ効果もある方法です。
スクラビング法
- 毛先を歯に直角にあてる
- 左右小刻みに1本ずつ磨く
毛先が歯間に入る程度に軽くあてて磨きましょう。奥歯の裏や噛み合わせ面の歯垢がよく落ちる方法です。
フォーンズ法
- 歯を噛み合わせる
- 毛先を歯に直角にあてる
- 上下の歯を一緒に、1本ずつ円を描くように磨く
- 歯の裏側は毛先を歯にあてて前後小刻みに磨く
奥から前へ磨くと効果的です。幼児や高齢者におすすめの方法です。
歯垢は外側から見えない歯周ポケットのなかにも形成されるため、毛先をポケットに実際に入れるイメージで磨きましょう。
歯間を磨く際は左右だけでなく縦にも動かすイメージで磨きますが、磨きにくい部分のため、歯間ブラシやデンタルフロスなどを併用して磨くことをおすすめします。
歯科医院での歯周病治療
歯周病治療は自宅での歯磨きと歯科医院の治療を並行して行います。
ここでは、歯科医院で行われる歯周病治療を、痛みの程度も含めて紹介します。
歯周ポケットの深さを測る
まずは、進行程度の見極めとなる歯周ポケットの深さを測ります。
初期のうちや通常は痛くない検査ですが、炎症があって痛い場合は麻酔も使用できます。
健康な人の歯周ポケットは3mm以内ですが、歯周病が進行していくと歯周ポケットが深くなっていきます。
歯周病の進行具合による歯周ポケットの深さは以下です。(参考:e-ヘルスネット「歯周ポケット」)
- 初期……4~5mm
- 中等度……5~6mm
- 重度……6mm以上
治療の成果があるかどうかを見る際にも度々行われる検査です。
スケーリング
スケーリングでは歯垢や歯石を除去する治療を行います。
歯石には軽石のような小さな穴が表面に空いていて、そこに細菌が棲みつきます。
スケーリングに使われる器具にはハンドスケーラーと超音波スケーラーがあり、ハンドスケーラーは市販もされていて、歯石も除去できます。
自分で除去する場合は歯茎を傷つけないよう注意してください。
歯科医院での歯垢・歯石除去は通常や初期の場合は痛みがほぼありませんが、歯周病で炎症を起こしている中等度・重度で痛みがある場合は麻酔をして行われます。
ルートプレーニング
ルートプレーニングは歯根(歯茎に隠れている歯の根の部分)の表面をなめらかにする、中等度の歯周病の治療で、麻酔をしたうえで行われます。
麻酔が切れると若干違和感はあっても、ズキズキと傷むことはないといわれています。
歯根面に歯垢が付着すると、細菌の毒素が歯のセメント質に浸透して「汚染セメント質」となります。
歯根表面が汚染されて汚染セメント質になると、歯石除去後も表面がざらついて歯茎が歯根につかず、細菌も住みつきやすいため、ルートプレーニングによって表面を削り、滑らかにします。
歯根には硬いエナメル質がないため削りやすく、削り過ぎると知覚過敏を起こすため、歯周ポケットが深いほど治療者の技術が問われる治療です。
外科治療
歯周病が中等度や重度に進行してしまった場合も、外科治療によって抜歯を避けられる可能性があります。
歯周外科治療には以下の2種類があります。
フラップ治療 (中等度) | 歯茎を切開し、歯根に付着した歯石や汚れを除去して縫合 |
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歯周組織再生治療 (重度) | 歯茎を切開し、骨再生のための処理を行い、縫合
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どの治療法を選択するかは骨欠損の状態や歯周ポケットの深さ、口腔衛生状態などを総合的に見て判断しますが、保険適用外の治療もあるため、条件をよく検討する必要があります。
抜歯
様々な治療法があるなかで、どの方法を選択しても残せないと判断した場合、やむなく抜歯をすすめる場合があります。
抜くべき歯を無理に残すと、周りの歯や骨に悪影響を与えたり、全身に菌が入り込むきっかけを作ることになるためです。
しかし、抜歯したからといってそこで治療は終わりではなく、失った歯の機能を補う治療をする必要があります。
抜歯後に行われる治療は以下です。
- 義歯
- ブリッジ
- インプラント
1本くらい歯がなくなっても食事はできると考える人も多いですが、歯が抜けると残された歯が移動するなどで噛み合わせや歯並びが変わったり、健康な歯への噛む力の負担が多くなるなどの問題が発生します。
歯周病治療は抜歯で終わるのではなく、口腔内の機能を回復し、健康な状態に戻るまで行います。
歯周病の治療にかかる期間と費用
最後に、歯周病の治療にかかる期間や費用などを紹介します。
費用については大体の数字ですが、症状が重くなるほど治療費は上がります。
また、通院回数や治療する歯の本数によって変わってきます。
進行度 | 期間 | 治療法 | 費用 | 注意点 |
---|---|---|---|---|
軽度 (歯肉炎) | 1~3ヶ月 |
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| その後3~6ヶ月に1回は定期検診 |
中等度 (歯周炎) | 3ヶ月ほど |
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| 外科治療には保険診療ではできない治療がある |
重度 | 6ヶ月~1年 またはそれ以上 |
|
| 自費の場合は内容によってさらに高額になる |
保険診療と自由診療は基本的に一緒に受けることができないため、どちらか一方を選択する必要があります。
保険診療は費用が抑えられますが、1回の来院では決められたルール内で可能な範囲でのみの治療となり、時間がかかります。
自由診療は保険診療のルールに縛られないため自由度が高く、最先端の技術を取り入れられ、短期間で済むなどのメリットはありますが、自費のため費用設定の幅が広く、高額です。
人それぞれに選択基準があるため、よく検討して治療に臨みましょう。
まとめ
歯周病になった場合、治療を終えても定期検診を続けて、悪化に気付く機会を用意しておくことが大切です。
年齢を追うごとに罹患率が上がる歯周病は、一生をかけて予防していく病気であることを常に心がけましょう。
AKIデンタルクリニック・矯正歯科医院では、定期検診や保険診療・自由診療・歯周病再生治療からインプラントまで、歯周病治療の最初から最後までを担う準備ができています。
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